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第321話 “人への投資“で重要性増す「ワーク・エンゲージメント」とは?

2022.10.12

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の蕎麦屋さんで昼食を取りながら投資談義を行っています。


T:政府の観光施策である全国旅行支援が10月11日よりスタートすることとなりました。また、入国時検査の原則撤廃や入国者数の上限撤廃なども行われる予定です。

神様:日本は、海外と比べるとコロナ禍からの経済回復が遅れています。今後は旅行や消費を中心に先送りされた経済活動が本格化していくことを期待しましょう。

T:またひとつ、コロナ禍前の日常に近づきますね。

神様:そうですね。食生活や働き方などコロナ禍では人々の生活に大きな変化が生じました。今後はこの生活がどのように日常に馴染んでいくのか注目されます。Tさんは、お仕事は出勤とテレワークでは、どちらが働きやすいと感じますか?

T:やはり自宅でテレワークの方が、通勤時間がかからないため楽ですね。コロナ禍で多くの企業がテレワークを導入していますので、完全にコロナ禍前の形には戻らないのではないでしょうか。

神様:Tさんのおっしゃる通り、テレワークはコロナ禍以降で大企業の拠点が多く存在する東京23区を中心に普及し、現在もその実施率は高水準を維持しています。しかし、テレワークに対してどの程度寛容であるかは、各企業によります。今年の6月には米国の実業家であるイーロン・マスク氏が従業員に対して「週に最低40時間はオフィスで過ごすこと」などと伝えたことが話題となりました。企業から見れば、社員の実情が見えにくくなっていることに戸惑っている一面があります。

T:テレワークのデメリットを考えると、従業員の孤独感や不安感が高まることはあると思います。特に、入社したての人は教えてくれる人が身近におらず不安でしょうし、不安を一人で抱えがちです。また、企業側がそんな従業員の異変に気付きにくくなっていることも懸念点です。

神様:テレワークにメリット・デメリットがある中で、最近は従業員の「エンゲージメント」が注目されるようになってきました。

T:以前もお話がありましたね。エンゲージメントは、従業員の「組織に貢献したい」という愛着心の強さを表す( 第247話 愛社精神が大事?企業が注目「従業員のエンゲージメント」 )ものでした。

神様:厚労省の令和元年版労働経済白書に「ワーク・エンゲージメント」という言葉が出てきます。これは、オランダ・ユトレヒト大学の教授が提唱した概念であり、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義されています。テレワークが普及し、このエンゲージメントが見えにくくなっていることで、生産性が下がっているのではないか?生産性を上げるためにはどのようにすれば良いか?が、企業の大きな関心事なのです。現在、従業員の働きがいなどを表すエンゲージメントスコアを測る需要が拡大しています。

T:雇われる側からも、各企業のエンゲージメントスコアが見られると良いですね。テレワークであってもなくても、働きがいのある、つまりエンゲージメントスコアの高い企業で仕事ができれば、孤独感や不安感に悩まされることもなさそうです。

神様:その通りですね。エンゲージメントスコアを測るだけでなく、スコアの向上をサポートするサービスを提供する企業も多数あります。近年、SDGsやESGの観点から、従業員の働きがいを高める取り組みや人的資本経営への関心が高まっています。それに合わせて人的資本などの非財務情報をまとめた統合レポートを発行する企業も増えています。

T:岸田首相の「新しい資本主義」では、「人への投資と分配」を重点事項としています。副業できる環境の整備や、これまでの年功制の職能給からいわゆる「ジョブ型」と言われる職務給への移行など、働き方改革が一層進むものと思われます。テレワーク環境も含めて、より働きやすい企業が生まれることを期待したいですね。

神様:岸田首相は7月16日の会合で、大企業の非財務情報について、2023年度から可視化を義務付けると表明しました。2022年中にルールを策定する方針です。これにより、大企業を中心に人的資本の情報開示が一層進み、エンゲージメントスコアの開示もさらに増えるのではないかと思われます。「人への投資」に注目が集まる中、日本の企業の働き方改革がどのように進歩するのか注目しましょう。

(この項終わり。次回10/19「DX化推進で注目される「アジャイル型開発」とは?」掲載予定)

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