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第322話 DX化推進で注目される「アジャイル型開発」とは?

2022.10.19

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内のカフェで投資談義を行っています。


T:河野太郎デジタル大臣は10月13日、2024年度秋に現行の健康保険証の廃止を目指し、マイナンバーカードと一体化する方針を発表しましたね。

神様:総務省によると、マイナンバーカードの全国への交付率は、令和4年9月末時点で49.0%です。今後はマイナンバーと運転免許証の一体化も進められる予定です。政府のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の要のひとつとして、今後の動向が注目されます。

T:アフターコロナへ移行する中、日本のDX推進はさらに加速していくのでしょうか。

神様:経産省の試算によれば、日本企業がDXに取り組まなければ、2025年から2030年にかけて年間12兆円の経済的損失を被ると予測されています( 第273話 少子高齢化で急がれる保険業界のDX )。企業の基幹システムの老朽化、維持管理費の高額化、データの不活用、さらにはIT人材不足の拡大など、今後システム関連で多くの問題が顕在化するため、様々な分野でDX化が進むと考えられます。

T:しかしDXと言っても、何をすれば効果的なのかが不明確であったり、システム開発の企業とうまく連携して取り組むことができなかったりと、DX推進における課題は多いのではないかと思います。企業の成功事例を上手に活用していきたいところですね。

神様:DX推進で注目を浴びている開発手法があります。「アジャイル型開発」と言いますが、ご存知ですか?

T:最近よく聞きますね。しかし、どんな開発手法なのでしょうか?

神様:従来のシステム開発の主流は「ウォーターフォール型」と呼ばれるものでした。これは、全ての開発工程を計画し、要件定義、設計、開発、テストの工程を順にこなし、最後にリリース(本稼働)するものです。予め作るものや何をするのかがはっきりと決まっている場合に効果的です。一方で現実には、開発の途中で新たな要望が出る場合や、作るものが変わる場合もあるのです。

T:確かに、社会情勢やトレンドの変化、新技術の台頭など、スタート時に予想できないことで要望が変化することはありますよね。

神様:最初に決められたスケジュールや人員の中で対応できれば問題ないかもしれませんが、そうではない場合はスケジュールを練り直したり、人員を追加したりと、計画の変更が発生します。そうすると、全ての開発工程を最初からやり直すことにもなりかねません。新たな要望が出るたびに多くの無駄が発生することになります。

T:いわゆる”炎上”と呼ばれるような、終わりの見えない開発や、クライアントからの無理な要望に応えて開発を行うことなど、システム開発に携わる人の苦労はよく聞きます。アジャイル型開発では、そのようなことが改善されるのでしょうか?

神様:アジャイル型開発は、機能単位で計画からテストまでを進めて逐次完成させる開発手法です。「適応型」や「反復型」などとも呼ばれますが、小さなサイクルを繰り返して全体を完成させていきます。機能というのは、そのシステム開発によって実現できるようになることを表したものです。一つひとつの機能を作っていきながら、その都度、顧客と認識を合わせていくので顧客の要望変更や市場の変化に柔軟かつ迅速に対応できるのです。

T:新たな要望が出た場合でも、開発工程を最初からやり直す無駄が発生しないわけですね。

神様:その通りです。日米で比較した場合、日本国内の企業によるアジャイル型開発の導入実績は遅れています。様々な理由がありますが、アジャイル型に十分に精通している開発者が少ないことも理由のひとつです。DXを加速させるためには、アジャイル型開発への移行も大きなポイントとなるでしょう。

T:DX化を進めるにあたり、開発者の育成も必要となるのですね。

神様:ちなみに、アジャイル型開発に大きく貢献したのは、実は日本人です。アジャイルで多く活用される「スクラム」という手法は、経営学者の野中郁次郎氏、竹内弘高氏の両氏が執筆した論文から大きな影響を受けています。トヨタの生産方式など、過去に米国もまた、日本から学んでいるのです。私たちも最新技術をしっかりと学び、さらに発展させていきたいですね。

(この項終わり。次回10/26「高まる穀物不足への懸念 ”食糧危機”を救うのは誰か?」掲載予定)

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