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第323話 高まる穀物不足への懸念 ”食糧危機”を救うのは誰か?

2022.10.26

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、秋晴れの公園を散歩しながら投資談義を行っています。


T:10月は値上げラッシュが続いています。私たちの身の回りの食品や生活雑貨などが値上がりし、買い物時にその厳しさを実感することが多くなりました。

神様:帝国データバンクが上場する食品メーカー主要105社について調査したところによると、10月は2022年内の値上げのピークとなり、品目数は6700品目になるとのことです。また、11月から12月にかけて乳製品の値上げも予定されているようです。

T:本当に厳しい状況ですね。今後さらに、家計に響いてくることになりそうですね。

神様:政府はできる限り影響を少なくするために、輸入小麦の政府売渡価格を据え置くなど、これまで物価高騰への対策を行ってきました。また、10月中に取りまとめる総合経済対策の中で、電気・ガス等のエネルギー価格や物価高騰への対策も盛り込まれる予定です。引き続き、今後の動向を注視していきましょう。

T:ロシアによるウクライナ侵攻の影響も大きいですよね。ウクライナは小麦など世界有数の穀倉地帯です。ウクライナ状況が良くなってくれれば穀物不足の懸念も解消されると思うのですが…。

神様:もちろん、その可能性もありますが、それほど単純でもありません。

T:どういうことでしょうか?

神様:現在、世界中で穀物不足への懸念が高まっているのは、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もひとつの要因ではありますが、全てではありません。例えば、夏は地球温暖化に伴う干ばつや記録的な熱波などの自然災害が世界中で多発しています。その影響で穀物の収穫量が減少しています。

T:なるほど。他にも新型コロナウイルスの感染拡大の影響もありますね。

神様:さらに言えば、世界的には人口が増加していますから、食用穀物の消費量が増加しています。また、新興国の経済発展に伴い肉類の消費が増えていますから、飼料用穀物の消費量も増加し、今後さらに増加傾向をたどることが想定されています。その一方で、世界の穀物収穫面積は拡大していません。そのため、穀物の供給不足が長期的に継続することが懸念されているのです。

T:根本的な穀物不足懸念への対応が必要ということですね。確か、以前にもお話されていましたね。農作物の生産性を向上させるために農薬の需要が高まっていく( 第261話 将来の農薬は減る?増える? 世界の農薬需要を考える )と。

神様:よく覚えていますね。限りがある耕地面積の中で農作物の生産性を向上させるために、農薬の需要が高まっています。今後、農産物価格の上昇が農家の増産意欲を刺激し、肥料や農薬の需要拡大につながっていくと見られます。2026年の世界の農薬市場では、2021年比で11.5%増となる734億米ドルに拡大すると見込まれていますね。

T:農業が魅力的なビジネスになることで、農業に携わる人が増えますね。そして、肥料や農薬の役割も大きくなっていく。その中で大切なのは、より安全で安心な農薬への転換を進めることですよね。

神様:おっしゃる通りです。農薬市場は、国内では安定成長が続く一方、海外の成長余地が大きいと見られます。今後は北米、中南米や東南アジアなどが主要市場となります。世界の期待に応え得る農薬を提供できるか、日本のメーカーのビジネスチャンスが拡大していく展開が期待できそうです。

T:ひょっとすると、日本の農薬メーカーが、世界の食糧危機を救う存在になるかもしれませんね。今後の活躍に期待したいと思います。

(この項終わり。次回11/2「団塊の世代、まもなく後期高齢者に シニアビジネス拡大へ」掲載予定)

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