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第389話 後継者不在で60万社が黒字廃業?重要性増す中小企業M&A

2024.03.06

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


T:2月27日、厚労省は令和5年の人口動態統計の速報値を発表しました。それによると、令和5年の出生数は75万8,631人となり過去最少を更新しました。

神様:前回、令和4年の出生数の速報値は79万9,728人でしたが、そこからさらに4万人の減少です。ちなみに婚姻件数は48万9,281組で前年より3万542組の減少です。数字から日本の少子化が非常に速いペースで進んでいることがわかります。

T:今は日経平均株価の高騰に沸いていますが、このままでは日本経済への深刻な影響も考えられますね。実はもう手遅れなのでしょうか?

神様:2030年以降では、若年人口が現在の倍のスピードで急速に減少していくとの予測があります。そうなれば、いよいよ少子化に歯止めがかからなくなり、少子化対策は手遅れとなるでしょう。まさに今が正念場です。一方で、経済においては労働力が減少しても1人の生産性を向上させることで、少子化によるマイナスの影響を相殺することは可能です。子育て支援を充実させるだけでなく、構造改革や技術進歩、さらには教育投資を通じた人的資本の向上などを目指す施策が重要です。

T:子育て支援だけでなく、働き方改革、退職年齢の引き上げ、女性の活躍推進、ロボットや生成AIの開発、ICT人材の育成など、なかなか複雑で一筋縄ではいかない問題ですね。

神様:何事も急には変われませんし、できるところから着手していくしかありません。とは言うものの、少子高齢化による日本経済への負の影響は現在進行形で進んでいます。Tさんは、日本の企業全体のうち、中小企業はどのくらいの割合かご存知ですか?

T:いいえ。80%くらいでしょうか?

神様:99.7%です。

T:ほとんどが中小企業なのですね。

神様:中小企業の大きな課題は、経営者の高齢化による後継者不足です。この課題を解決する手段として、中小企業のM&Aが重要性を増しています。中小企業庁が2019年12月に発表した「第三者承継支援パッケージ」によると、2025年までに経営者が70歳以上で後継者が不在となる企業は127万社と予測されています。そのうち60万社は、黒字であるのに廃業してしまう可能性があるということです。

T:2025年までに60万社が黒字廃業の可能性ですか。途轍もない数です。

神様:既に後継者不在による企業の倒産件数は増加傾向にあります。帝国データバンクによると、後継者不在を理由とした2023年の倒産件数は前年比で18.5%増となる564件となり、過去最多を更新しました。企業の業種では建設業が最も多く、続いて小売業でした。

T:このような倒産を防ぐために、M&Aが重要ということですね。

神様:その通りです。注意が必要なのは、中小企業のM&Aと大企業のM&Aは性質が異なることです。中小企業の多くは、後継者は経営者の親族内から選び、事業が引き継がれてきました。もし後継者が親族内にいない場合は、自社の役員や従業員の中から選びます。それも難しい場合は自社外からとなり、M&Aは最終的な手段です。

T:M&Aが必ずしも双方にとってプラスになるわけではありませんが、成功事例を多く作っていくことで、黒字事業を存続できる機会が増えることを望みます。

神様:既に政府を中心に中小企業の事業承継やM&Aを支援していく政策が行われてきています。しかし、まだ十分であるとは言えません。ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のデータによると、2023年の国内M&A案件は前年比で89.8%増となる約12兆円で、大きく伸びました。より充実した支援がなされることで、今後さらに伸びていくことが期待されます。

T:政府による支援だけでなく、M&Aの仲介やアドバイス業務などによって中小企業を支援する企業の活躍が見込まれますね。これも日本経済への負の影響を防ぐ大事な一手となりそうです。

(この項終わり。次回3/13掲載予定)

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