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第388話 脱炭素の切り札・水素普及へ「水素社会推進法案」で何が変わる?

2024.02.28

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海が見えるカフェでカフェオレを飲みながら投資談義を行っています。


T:2月22日、日経平均株価が史上最高値を更新しました。1989年12月29日につけた3万8957円44銭を上回り、3万9098円68銭となりました。今後ますます株価の動向に注目が集まりそうですね。

神様:日本経済は「デフレからの完全脱却」が確認されつつあります。内閣府が2月15日に発表した2023年の国内総生産(GDP、速報値)は、実質GDPが前年比+1.9%、名目GDPは前年比+5.7%となりました。名目の成長率は、バブルの影響が残る1991年の+6.5%以来の高さとなります。また、GDPでみたインフレ率であるGDPデフレーターは前年比+3.7%、国内需要に限定した国内需要デフレーターでも前年比+2.6%となりました。労務費などの幅広いコスト上昇が価格に反映されており、国内要因によるインフレが根付き始めていることがわかります。

T:あとは、賃上げですね。春闘交渉の行方に注視したいと思います。

神様:さて2月13日、政府は脱炭素社会に向けて水素エネルギーの普及を目指す「水素社会推進法案」を閣議決定しました。今日は水素の話をしましょう。

T:水素は利用時に二酸化炭素が発生せず、製造時に再生エネルギーを利用すれば製造から利用まで全体で脱炭素が実現できるエネルギー源として注目されています。具体的にはどのような内容の法案なのでしょうか?

神様:水素は取り扱うコストが高いことがデメリットのひとつです。法案では、事業者に水素と天然ガスの価格差を埋める支援や、水素設備建設への助成金交付などを盛り込んでいます。国内の水素生産量を見てみましょう。2022年の国内水素生産量は、6億1,078万立方メートルでした。

T:2012年以降で見ると、年間の生産量はほぼ横ばいという感じでしょうか。

神様:水素はこれまで、主に工業用途で使われていましたが、今後はエネルギー用途の拡大が期待されるでしょう。例えば、トラックやバスなどの輸送手段です。これまで、”物流の要”である大型モビリティは、脱炭素が難しい分野とされていました。なぜだかわかりますか?

T:新しい車両を購入するのに莫大な費用がかかりますね。また、全国に隈なく行きわたる輸送インフラですから、燃料を供給できるスタンドも全国に網羅されていなければ活用できませんね。

神様:その通りです。他には、例えば電気トラックを考えると、充電時間がかかり負担となること。バッテリーが重いためトラックの積載量に影響が出てくることなども問題です。

T:なるほど。なかなかハードルが高いですね。

神様:水素燃料電池は、性能や運輸面で比較的トラックやバスなどと親和性が高いとされています。水素燃料電池の導入が支援されれば、これらの輸送手段への普及にも期待が持てます。また、水素ステーションは2023年12月7日現在、国内161カ所で運用されています。今後の増加に期待したいところです。

T:最も多く設置されているのは愛知県ですか。トヨタ自動車の本社もありますし、自治体でも力を入れている( 第228話 「2050年までに脱炭素社会」 日本に水素社会到来へ )のでしたね。

神様:現在、愛知県で設置されているステーションの数は34カ所です。愛知県は、2025年度末までに100カ所程度設置する目標を立てています。

T:あと2年で現状の倍以上の数を設置するのは難しいでしょうが、どこまで目標に近づけられるか注目ですね。

神様:想定では2025年度末までで全国で水素ステーションが1000カ所程度、燃料電池自動車(FCV)が200万台程度走っていることになります。日本は水素エネルギーの導入に長く取り組んできた経緯があります。関連する有力な企業が数多くあります。今後のビジネスチャンスの拡大に期待しましょう。

(この項終わり。次回3/6掲載予定)

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