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第420話 明暗分かれる結果に 少子高齢化時代に生き残る「自転車屋さん」とは

2024.10.16

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、さわやかな風が吹く公園を散歩しながら投資談義を行っています。


T:10月9日、衆議院が解散しました。総選挙は10月27日に行われます。

神様:石破新内閣は、経済運営では「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現するため、岸田前内閣の方針を継承し「資産運用立国の取組を引き継ぎ、発展させる」と語っています。これまでの政権の総括、そしてこれから少子高齢化が進む中での日本の行く末を決める大事な選挙となるでしょう。

T:石破内閣発足早々に「国民の審判」を受けることになりますが、どのような結果となるか注目です。

神様:日本の人口は、2004年をピークに減少傾向をたどっています。来年以降も少子高齢化はさらに進み、経済への影響も隠せません。しかし、必ずしも経済への悪影響に直結するわけではありません。今日は少子高齢化時代の小売の一例として、自転車販売業を見てみましょう。

T:自転車販売業と言えば、小さな個人経営による町の自転車屋さんが思い浮かびます。しかし、今後は自転車の個人商店は難しいのでしょうね。

神様:どうしてそう思われますか?

T:人口の減少は消費にとって逆風です。自転車に乗る人の数も減っていくでしょう。今は量販店、自転車専門店も豊富ですし、ECで購入することもできます。需要が減っていく中で、競争相手は増えているのですから、厳しいのではないでしょうか。

神様:確かにおっしゃる通りです。まず、自転車の国内生産は現在停滞しています。2020年以降で見ると、新型コロナウイルス感染症の拡大により外出機会が減少し、自転車の需要も一時的に減退しました。しかしその後、自転車はコロナ禍において密を避けながら運動不足を解消できるアイテムとして需要の高まりを見せました。

T:なるほど。運動不足を解消できる健康ツールとして自転車は最適ですからね。今はその需要がひと段落した状況でしょうか。

神様:需要の高まりが落ち着き、その反動が生じているのが現状です。しかし一方で、自転車のニーズを支え続けているものがあります。「電動アシスト付き自転車(電動アシスト車)」です。

T:そう言えば、最近の自転車屋さんでは電動アシスト車が多く販売されていますよね。

神様:電動アシスト車は一般の自転車に比べて高額ですが、最近は軽い電動アシスト車も登場し、人気を博しています。国内自転車生産金額の推移を見ると、コロナ禍以降は生産金額のうち約9割以上を電動アシスト車が占めています。

T:考えてみると、楽に乗れる自転車は高齢者にとって最適です。高齢化が進むにつれて、電動アシスト車の需要が高まっていくのも納得です。

神様:高齢者は自動車の運転技量が低下した場合、運転免許を返納することが推奨されています。しかし、それでも車に乗るのは住宅地近隣の商店街が衰退し、買い物をするためには郊外の商業施設へ頼らざるを得ない面があります。車に比べて大きな事故を起こすリスクの少ない電動アシスト車は、免許不要の交通手段として注目が高まっているのです。

T:ということは、電動アシスト車をそろえれば、町の小さな自転車屋さんもまだまだ安泰と考えて良いのでしょうか?

神様:全国の業態別自転車販売構成比率(2022年度)を見ると、小規模小売店の割合はわずか2.5%と非常に小さくなっています。中規模小売店でも5.2%です。大きな割合を占めるのは、大規模小売店、量販店や通販です。自転車は陳列に場所を取られますから、在庫の保管という点からも大規模小売店、量販店、通販が運営しやすいこともあり、ニーズがあります。加えて、小規模自転車店では後継者の問題もあるでしょう。今後もこの傾向は続くでしょう。

T:結果として、量販店や大規模自転車店と小・中規模の自転車店ではっきりと明暗が分かれているのですね。しかし思うに、大規模自転車専門店も最初から大きなお店だったわけではないでしょう。すばらしい経営手腕を発揮して事業を作り、シェアを伸ばしてきたお店も存在します。”時代の流れ”の一言で片づけるのではなく、個々のお店の”中身”を見ることも大切ですね。

(この項終わり。次回10/23掲載予定)

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