第421話 人口は世界一位に 投資家が今インドに注目する理由
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内にある喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
T:10月15日に衆議院総選挙が公示され、27日に投開票が行われます。それに伴い、と言っていいのでしょうか。日経平均株価も上昇しているようです。どうして選挙になると株価が上がる傾向にあるのでしょうか?
神様:昔から株式市場では「選挙は買い」という相場の経験則があります。2000年以降、これまで8回の衆議院総選挙がありましたが、解散日から選挙日の前営業日までの日経平均株価の騰落率を見ると、8回の選挙のうち7回は株価が上昇しました。平均で4.63%上昇しています。これは経験則ですから、理論的に根拠があるわけではありません。しかし、選挙にあたり、各政党の候補者は経済成長に対する前向きな政策を表明することが多いですから、今後への期待感もあるのかもしれません。
T:なるほど。今回も「選挙は買い」となるか、しっかり確認したいと思います。
神様:11月には米国の大統領選挙も控えています。世界情勢を注意深く見ていきましょう。さて、政治から投資の話に切り替えましょう。最近の投資界隈ではインドが注目を浴びています。今日はインドについてお話しましょう。
T:インドと言えば、昨年に人口で中国を抜き、世界一位になったことが話題となりました。
神様:国連の世界人口ダッシュボードによる2023年中位推計によれば、インドの人口は14億2,860万人を超えました。中国の人口は14億2,570万人で、インドが若干上回っています。インドと中国の人口推移を見ると、2024年もインドの人口はさらに伸びる一方で、中国は横ばいか減少の予想です。
T:人口が増加しているということは、経済成長のポテンシャルもあるということですか?
神様:おっしゃる通り、豊富な生産年齢人口を持っているので、経済成長も著しく、インド市場は有望な市場と見られています。
T:しかし、かなり以前から「今後はインドに注目」とは言われていたようにも思いますが、その辺りはどうでしょうか?
神様:インドが注目されるきっかけとなったのは、2003年に発表された「BRICSレポート」と言われています。BRICSとは、ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国を指し、その後南アフリカが加わりました。2024年1月には、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、イラン、エチオピア、エジプトが加わり10カ国に拡大しています。レポートではBRICSが世界の経済成長をけん引していくと予測されています。
T:中国やロシアは政治的には西側諸国と対立することも多いですよね。インドはどうなのでしょうか?
神様:インドは特定国との同盟関係を結ばず、いわゆる主要国との「全方位外交」を展開しています。また、インド太平洋においては自由で開かれた地域であり、法の支配を重視するなど、日本と立場を同じくしています。
T:なるほど。そうすると投資でも注目しやすいわけですね。
神様:今インドが注目されている背景には、米中の経済的な対立が深まっている状況もあります。米国のバイデン政権は2022年10月、先端半導体および半導体製造装置の中国への輸出を制限する規制措置を導入しました。米中の政治的対立を背景に、インドでの事業展開を考える企業が増えていくことが考えられます。一方で、インドは人口は増えていますが、若者の失業率が高く、雇用が安定していません。インドのモディ首相は、半導体の国産化を推進するため、補助金の支給や特定の分野に対する投資には税制面で優遇する措置を設定しました。外資の誘致による雇用の創出に取り組んでいます。
T:そうすると、今後はグローバル企業の生産拠点が中国からインドへシフトする可能性もあるのでしょうか?
神様:可能性は考えられます。実は、11月の米大統領選に立候補している民主党候補のハリス氏、そして共和党副大統領候補のヴァンス氏の配偶者は、ともにインド系にルーツがあります。インドと米国との関わりの強化も期待できるかもしれません。
T:なるほど。今後、インドとのつながりのある企業にとってはチャンスと言えそうですね。
(この項終わり。次回10/30掲載予定)
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