兜のささやき兜のささやき

第450話 通信計測器市場、低迷から回復へ 背景にある「新たな需要」とは?

2025.06.04

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。


神様:Tさん、「通信計測器」とはどんなものかご存知ですか?

T:通信計測器ですか?名前から何となく用途を想像できそうですが、実際にどんなもので何に使うのかはよく知りません。

神様:有線や無線などのインターネット回線・LAN回線などを対象に、回線の伝送品質などを計測する機器を通信計測器と言います。最近この通信計測器市場が注目を集めています。経済産業省が発表した生産動態統計によると、無線通信測定器の2025年1~3月において、累計の生産数量が前年同期比で15.3%増となる2,994台となり、生産金額は前年同期比で17%増となる27.2億円となりました。

T:通信計測器は一体どんな時に使うのでしょうか?

神様:Tさんは、国内で5Gサービスがスタートしたのはいつだったか、覚えていますか?

T:確か、2020年の春ごろでしたよね?

神様:その通りです。日本で第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスが始まったのは、2020年の3月でした。5Gは、それまでの4Gよりも超高速・大容量で超低遅延な通信を実現できることが特長です。新しい通信規格がスタートすれば、新通信規格を使ったデバイスやアプリケーションの性能検証が必要になります。性能検証で用いられる通信計測器も、5Gサービス開始に向けて需要が高まりました。

T:なるほど。例えばですが、5G対応のスマートフォンがきちんと基地局と送受信を行うことができ、仕様通りに動作するかを確認するのもこの通信計測器ですね。

神様:おっしゃる通りです。まさに、Tさんが述べたような用途で使われていたため、当時の通信計測器関連企業は投資銘柄として大きな注目を浴びました。しかし、その後5G向けの投資が一巡し、需要は低迷していました。

T:それがここ最近また復活してきているということですか。

神様:足元で通信計測器の需要が再び増加している背景には、新たな需要が創出されていることが考えられます。新たな需要のひとつは「衛星通信」の利用です。

T:衛星通信、そう言えば最近よく聞くようになりましたね。

神様:今年に入り、携帯キャリア各社が衛星通信を利用したサービスの提供を発表しています。一部のキャリアではすでにサービスを開始し、衛星通信は現在モバイル業界で最もホットな話題と言ってもいいでしょう。

T:衛星通信なら基地局がなくても衛星と通信できればいいわけで、「圏外」がほとんどなくなるのではとの期待があります。サービスが普及するのが楽しみですね。

神様:衛星通信を利用したサービスが拡充されれば、それに対応する通信計測器が必要となります。通信計測器の関連企業では大きな商機となるでしょう。そして、もうひとつの新たな需要は、データセンター需要の拡大です。生成AIの普及にともない、データセンターの建設が各地で進められています。データセンターの建設に合わせて通信計測器の利用が伸びているのです。

T:AIやIoTの活用が広がるにつれ、データセンターの高速大容量化も進んでいます。また、通信のリアルタイム性も重要になっていますから、データセンターの品質もより厳しいものが求められていますよね。今後はスマートシティや自動走行・自動運転車の開発も進みます。通信計測器の活躍の場もさらに広がりそうですね。

神様:グローバルインフォメーションの調査によると、通信検査・計測の世界市場規模は、2034年に向けて年平均で8.4%の成長が見込まれています。Tさんがおっしゃるように、AI活用の普及で情報通信量が増大するほど、通信計測器の重要性も増していくことになるでしょう。通信計測器の関連企業の商機が今後さらに拡大していくことが期待されます。

(この項終わり。次回6/11掲載予定)

投資・相続のご相談は
いちよし証券へ

全国の店舗にて、お客様の資産運用や相続についてのご相談を受け付けております。
お客様の人生設計に寄り添いながら、最適なご提案を行います。

PAGE TOP
PAGE TOP