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第490話 インフレで注目 上場企業による「企業不動産の流動化」ニーズ高まる

2026.03.25

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内にある喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:最近、企業不動産が注目されています。今日はそのお話をしましょう。

T:よろしくお願いします。

神様:今、世界的にインフレ傾向にありますが、日本もその影響下にあります。総務省によると、2025年の生鮮食品を除いた消費者物価指数は前年比で3.1%の上昇となり、食料品の値上がりを中心に物価上昇が加速しています。こうしたインフレ圧力が強く、お金の価値が相対的に低下する中では、現金や預金よりも不動産や金などの実物資産の価値が高まります。そういった背景から最近は不動産の価値が向上しています。

T:企業不動産というのは、企業が保有する不動産のことですか?

神様:はい。不動産の価値が向上する中、企業が保有する不動産価値に注目する投資家が増えています。国土交通省は5年ごとに「法人土地・建物基本調査」を公表しています。それによると、法人が所有している土地・建物の資産額が2023年に大きく膨らんでいることが分かります。

T:インフレ傾向が強くなる中で、企業が保有する不動産の価値が高まっているということですね。企業にとってはいいことですね。

神様:確かに、企業不動産の価値向上は財務の安定性につながります。一方で、投資家からは資本効率改善という観点で、経営資源として有効活用を求める意見も多く出ており、対応が求められるところです。

T:なるほど。2022年4月より、東京証券取引所では「東証改革」と呼ばれる上場制度改革が進められています。上場企業には企業価値を高めるための施策が求められています。例えば、PBR(株価純資産倍率)1倍を下回る企業には「資本コストや株価を意識した経営」が要請され、改善計画が求められます。PBRは資本効率とも密接に関連していますよね。

神様:おっしゃる通りです。PBR(株価純資産倍率)とは、企業の株価が1株あたり純資産の何倍の水準にあるかを示す指標です。資本効率とは、自己資本利益率(ROE)などを指し、企業が株主や銀行から調達した資金(資本)をいかに効率的に活用して、利益を生み出しているかを示す指標です。一般に資本効率を高めることがPBRの向上にもつながります。

T:つまり、価値が向上している一方で低収益な不動産をより有効活用することは、PBRを高めるためにも有効な手段となるわけですね。

神様:東京商工リサーチでは、毎年上場企業の不動産売却動向の調査結果を公表しています。それによると、2022年度に東京証券取引所に上場している3,803社のうち、国内不動産の売却を開示したのは114社となり、15年ぶりに100社を上回りました。これはコロナ禍で疲弊した財務体質の改善や強化が目的であったと見られています。そして、2024年度の上場企業の不動産売却は85社でした。コロナ禍から財務体質が改善したことで、社数は減少傾向にあります。一方で1社あたりの平均土地総面積が増えており、資本効率改善に向けて大規模な売却が進められていると推察できます。

T:なるほど。

神様:不動産や債権などの資産を金融市場で取引可能な形に変えることを「資産の流動化」と言います。不動産の流動化、つまり不動産を売却することで企業は事業成長のための資金を得ることができ、株主還元にもつながります

T:インフレが進む中で、今後も不動産の流動化が進みそうですね。

神様:投資家はなぜその不動産を持ち続けるのか、どのように株主価値につなげるのかを示すよう、企業に求めています。おっしゃる通り、投資家への対応策として、不動産の流動化を進める企業が今後も増えていくでしょう。したがって、企業不動産に関わる企業にとっては大きなチャンスが到来していると言えます。

T:なるほど。インフレが進む中、不動産業、特に企業不動産を扱う企業に着目してみるのもありですね。今日も勉強になりました。

(この項終わり。次回4/1掲載予定)

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