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第51話 シェアリングエコノミーと 株式投資(その4)

2017.05.17

株の神様に投資のポイントを教わっているTさんは、新たな経済の動きであるシェアリングエコノミーのインパクトについて聞いています。第一にシェアリングエコノミーが主要産業の企業の顔ぶれを変える可能性、第二に企業で正社員として働くという雇用のあり方の変化、そして話は最後の3つ目のインパクトに話が及んでいます。


神様:3つ目の大きなインパクトについて話す前に、『シェアリングエコノミー』の著者、ニューヨーク大学経営大学院A・スンドララジャン教授が面白いエピソードを紹介しています。
フランスでは、都市間の移動で空いている車の座席をシェアする『ブラブラカー』というライドシェアのサービスが人気で、現在利用者はユーロスターの5倍にものぼるそうなのですが、面白いのは、その『ブラブラカー』のユーザーへの調査で、「関わりのある人の中であなたが信頼できる対象は?」という問いに対し、回答のトップ3が、ファミリーで94%、次いで友人が92%。ブラブラカーは88%で3位になったそうです。会社の同僚や近所の人よりも上位だったそうですよ。

T:えっ?ライドシェアって、空いている座席のシェアで見も知らない人と車に乗ることになるわけですよね??それが信頼できるって…

神様:『ブラブラカー』上では、利用者と座席提供者のプロフィールが完全に公開され、フェイスブックなどのSNS上のIDによっても互いの人となりを知ることができるため、「イノベーションによって、知らない個人同士を信頼するインフラが構築されている」そうですよ。

T:それが意味することって…今の市場では、企業が広告宣伝等、ブランディングにお金をかけて、それを消費者が信頼してお金を払うという構図ですが、それが変わっていくということですか??

神様:そうですね、ある意味、ユーロスターというブランド以上に、プラットフォームを通じて見知らぬ個人が信頼されているわけですからね。

T:そうすると第三のインパクトは、企業と個人間の購買以上に、新たなインフラを通じて信頼し合う個人間の取引が増えていくということなのでしょうか?

神様:さらにもう一歩深く考えると、お金をたくさん持って何かを所有するということが良いという時代から、シェアリングエコノミー上で「この人は信頼できる」という評価を得ることが大事な時代に変わっていく兆しがあるということかもしれません。

T:それは大きな価値観の変化ですね。お金やモノをどれだけ持っているかという尺度だけでなく、活動に対する評価の積み重ねで「信頼できる人か?」が尺度になる経済社会となるかもしれないということですよね。今よりは一歩進んだ社会のようにも思えます…
そうすると、やはりシェアリングエコノミーの関連銘柄は、個々にはもちろんよく見ないといけないものの、より良い経済社会の実現を応援するという意味でも、全般的には中長期の視点で買っておいた方が良いということなのでしょうか?

神様:理想と現実を見つつです。シェアリングエコノミーについては、一方で、雇用の縮小や市場のダウンサイジングを懸念する声があるのも事実です。

T:そうですよね…日本では自家用車のライドシェアは規制されていますが、NYやロンドン、パリではタクシー運転手たちが「俺たちの仕事を奪うな」とデモがあったとも聞き、複雑な気持ちになりました。

神様:シェアリングエコノミー関連銘柄への投資は、今のところ、将来性の高い新商品・新技術や成長シナリオを評価して買いを入れる「理想買い」の段階です。投資には「理想買い」も有効ですが、夢を追うだけでは投資にはなりません。

T:足元の業績などをきちんと評価する「現実買い」とのバランスがやはり重要となりますよね。

神様:そう、「理想を買って、現実を売る」となれば、ベストかもしれません。つまり、事業の中期的な成長を評価して理想買いを入れ、現実に事業が成果を出して業績拡大に結びついた段階で利益を確定することが出来れば言うことなしでしょう。

(この項終わり。次回5/24「知っていると得する!?株の名前」掲載予定)

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