兜のささやき兜のささやき

第60話 戦争と株(その1)

2017.07.19

株の神様に投資のポイントを教わっているTさんは、時折、神様と世界の情勢について雑談しつつ、学んでいます。


T:イスラム国の動きが沈静化したようで、一安心です。まだまだ予断は許しませんが。

神様:世界に武器がある限り、人が人と殺し合う紛争は無くならないでしょうね。

T:人が存在する限り、誰かを傷つけるために、武器を生み出し続ける人がいるとも言えるかもしれません。

神様:あなたは戦争が好きですか?

T:とんでもない!嫌いですよ。世界から無くなった方が良いと思っています。

神様:私も戦争好きではもちろんありませんが、武力を完全に否定できない面もあるかなとも思っています。

T:えっ!どういうことですか?

神様:少なくとも技術の進歩にはつながってはいることもあります。

T:あっ、軍事技術が民生技術に転用される『スピンオフ』のことですね。

神様:そう、我々の生活は『スピンオフ』製品に満ち溢れています。例えば身の回りのものでは、ティッシュペーパー。もともとは第一次世界大戦中に、吸収力の高さからガスマスクのフィルターの代替品として使われました。大戦後に大量のティッシュペーパーが余ってしまったため、米国のキンバリー・クラークがメイク落とし用として「クリネックス」の商品名で販売し、現在に至ります。

T:そうだったのですね。それは知りませんでした。

神様:身近なところでは、電子レンジもそうです。1945年頃に米国の軍需製品メーカーであるレイセオンの技術者が、レーダー開発の実験中に偶然マイクロ波による急速な加熱現象を発見したことから発明されています。

T:食べ物で言うと、缶詰は、ナポレオンが遠征における食糧問題を解消するためアイデアを募った際に採用された「瓶詰め」が原型で、その後、より軽くて割れない缶詰に発展したことは聞いたことがあります。

神様:『スピンオフ』は衣食住全てに及んでいます。ファッションで言えば、トレンチコートは、その名の通り、寒冷なヨーロッパの塹壕で防水・防寒のために開発・改良されたコートですし、日本の若い人もよく着るピーコートはイギリス海軍が船の上の厳しい条件に対して工夫を凝らしたものです。例えば、風向により左右どちらでも上前を変えられますし、片方のボタンが破損しても、もう片方で止められるようになっています。

T:カモフラージュ柄の服は密林で身を隠すためのものでしたが、いまだに若い方からも支持を受けていますものね。

神様:腕時計だってそうです。19世紀末のボーア戦争で、イギリス軍が砲撃のタイミングを測る懐中時計を革のベルトで手首にくくりつけて使ったことが始まりです。懐中時計を手に持っていては片手しか使えませんが、腕時計の誕生により両手で戦えるようになったのです。有名なロレックスの創設者はこの情報を聞きつけ、腕時計の将来性を感じて腕時計輸出会社へ就職し、のちに世界的ブランドが生まれることになったのです。

T:鉛筆やボールペン、システム手帳といった文具類も、戦争における前線での記録用のために開発・改良されたという話も聞いたことがあります。

神様:つまり、戦争で今まさに使われているものが、次の時代では生活をより便利なものにする、そこに注目して投資すると中長期ではリターンが期待できるという事実は厳然としてあるのです。

T:悲しいけれど、それも現実の一つなのですね。

神様:そして、我々が今最も恩恵を受け、成長が期待できる分野、ITはまさに軍事技術から生み出されたものが多いです。

(この項つづく)

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