兜のささやき兜のささやき

第188話 拡大する転職支援サービス市場 鍵は働き方と高齢化

2020.01.15

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、東京の下町にあるお茶屋で団子を食べながらの投資談義となりました。


T:神様、今年も1年よろしくお願いいたします。今年は子年。相場の格言では「繁栄」を表すと言われます。良い1年になるといいですね。

神様:今年もよろしくお願いします。そうですね。穏やかで平和な1年になることを願います。「繁栄」の後は丑年の「つまずき」ですから、一喜一憂はできません。これまでやってきたように、今年、来年、再来年と、長期的に成長が見込めるところに注目していきましょう。

T:はい。今年は、どの業界に注目しましょうか?

神様:今回は、今後拡大が見込まれる「転職支援サービス」について、お話しましょう。「転職サービスの利用動向と市場規模予測」という調査によれば、2018年の転職サービス市場は4,619億円でしたが、2021年には6,075億円へと拡大が見込まれています。

T:転職支援サービスとは、転職エージェントや求人広告企業などですか?

神様:そうですね。求人広告や転職の成果報酬を主な収益源としたサービスと考えてください。2014年度から2018年度にかけて、転職決定数の推移が伸び続けています。中でも、異業種への転職が伸びているところは注目です。

T:政府は「就職氷河期世代」への就職支援を行っていますが、その影響ですか?

神様:それよりも、「働き方改革」の影響が大きいのではないかと思います。考えてみてください。ワークライフバランスの推進により、社員の働き方が変化した結果、どんなことが起こりましたか?

T:残業時間が減り、家族と過ごす時間や自分のために使う時間が増えたように思います。私の周りでも、早く退社して興味のあることを勉強する時間を作ったり、異業種交流会に参加する機会を作った、という声を聞きますね。

神様:まさにその通りで、資格取得などのスキルアップを図ったり、自分の職業の適正を見つめ直す機会が増えたことで、異業種への転職活動も活発化している、と見られています。

T:もはや終身雇用の時代ではないですから、時代の流れなのでしょうね。給料だけでなく、職場環境、人間関係も含めて、より良い環境を求めて、転職へのハードルは下がっていますよね。

神様:もう一つの要因としては、高齢化が挙げられるでしょう。定年年齢は引き上げられる傾向にありますが、それは必ずしも、同じ会社で働き続けることを想定したものではありません。これまで長く働いてきた会社で役職定年になり、別の会社へ転職するケースも増えています。企業側も、従業員の新陳代謝を重視していますし、政府も高齢者のより柔軟な働き方を想定して、定年延長を議論しています。

T:しかし、高齢になるほど、転職先が決まるのは難しいですよね。

神様:ある再就職支援会社の調査によれば、再就職までにかかる時間は40代以降になると「360日以上」かかるケースが急増します。逆に、新しい仕事先が「90日未満」で決定するケースは減少します。おっしゃるように、高齢になるほど、転職先が決まるのは難しいのが現状です。

T:そこが変わらないと、高齢で転職を決断するのは勇気がいりますよ。以前家族でも、今後のシニア人材について (第148話 シニア人材と株) 話しましたが、高齢者の人材のマッチングや、スムーズな転職を支援してくれるような転職支援サービスがあるといいですね。

神様:業界ごとにも傾向は異なるのかもしれませんが、今後そういった動きは活発になるものと思われます。この業界の市場動向や今後の予測にも、それが表れていると言えます。若者からお年寄りまで、幅広い年齢層のニーズをつかむサービスに期待したいですね。

Tさんは、今後の転職支援サービスの動向について、働き方改革と高齢化の2つの視点から、良いサービスを生み出している企業はどんな企業か、調べてみようと思いました。

(この項終わり。次回1/22掲載予定)

投資・相続のご相談は
いちよし証券へ

全国の店舗にて、お客様の資産運用や相続についてのご相談を受け付けております。
お客様の人生設計に寄り添いながら、最適なご提案を行います。

PAGE TOP
PAGE TOP