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第310話 世界的なインフレ進む インフレ下で競争力を発揮する企業とは? 

2022.07.20

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町にあるお茶屋さんで投資談義を行っています。


神様:7月13日に米国の6月消費者物価指数が発表され、前年同月比で9.1%上昇したことがわかりました。これは約40年半ぶりの記録的なインフレ水準となります。
 

T:今、世界中でインフレが進んでいますが、その要因は何でしょうか?

神様:インフレの要因については、多くの専門家がすでに分析している通り、いくつかの要因が考えられています。インフレは、モノやサービスの需要に供給が追いつかず、物価が上昇して起こります。2020年以降、新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンや労働力の混乱により、需要と供給のバランスに変化が生じました。また、先進国を中心とした各国政府は金融緩和等の財政政策を行い、コロナ禍の経済を支えてきました。その甲斐もあり、ワクチン接種が進むにつれて世界経済は活発化し、パンデミックからの立て直しを図っています。一方でロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、エネルギー価格や原材料価格が高騰しています。中国・上海のロックダウンの影響もありました。供給網は不安定となり、インフレが加速していると見られます。

T:なるほど。今後はどのような展開が考えられるのでしょうか?

神様:先進国を中心に、インフレに対応するために、金融引き締めを図る動きが見られます。米連邦準備理事会(FRB)は2022年3月以降で利上げを実施してきました。欧州中央銀行(ECB)でも7月に利上げを実施するとの報道が見られます。問題は、金融引き締め、つまり利上げは企業にとって資金の調達がしづらくなることにつながり、景気の減速が懸念されることです。急激な引き締めは景気の後退を招きます。ここは市場の動向を見ながら、慎重に判断することが求められます。

T:米国でインフレがさらに進んでいるとなると、FRBの利上げにも影響がありそうですね。

神様:FRBは6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.75%引き上げ、1.50~1.75%としました。大幅な利上げです。議事要旨によれば、7月の会合で0.50%あるいは0.75%の大幅利上げを行う見通しを示しました。FOMCの参加者は「今後2年の経済成長について不確実性が高まっている」とし、今後のインフレ動向次第では「より厳しいスタンスになる可能性もある」との姿勢を示しています。一方でこれらは市場の予想の範囲内ではありました。仮に、次回7月26日から27日に開催されるFOMCで0.75%の利上げを行う場合、その時点でFF金利の誘導目標は2.25~2.50%となり、誘導目標の上限金利が中立金利の2.5%に達します。一般に、中立金利を上回ると、デフレ圧力が生じます。それにより、インフレ圧力に変化が生じる可能性に期待が持たれています。

T:なかなか難しいお話ですが、インフレは急に解消するものではなさそうですね。

神様:このようなとき投資の観点では、インフレ下で競争力を発揮する企業に注目するのも一つの方法です。「CRB指数」という指標があります。これは、インフレ動向の先行指標としてよく用いられるものですが、2000年以降においてCRB指数が上昇した局面において、東証業種別指数の上昇率ランキングでは、海運や鉄鋼、鉱業、卸売、保険などの指数が共通して上位10位内に入りました。

T:つまり、インフレの状況下で競争力の強い業種が海運鉄鋼鉱業卸売や保険などということですか?

神様:その通りです。資源価格上昇が業績に反映される商社や鉱業、利上げ局面において運用益の向上が見込まれる保険や金融、そして現物資産を取り扱う不動産などは、インフレや金利上昇局面への耐性が強い業種と言えるでしょう。また、高い競争力を背景に価格支配力がある企業もインフレ耐性が強いと言えます。

T:なるほど。勉強になります。

神様:短期的な商品価格では、ピークアウトの動きも見られます。しかし、中国ロックダウンの解除に伴う経済活動の再開などから、資源の需要が高まる局面も見込まれます。今後の米国の金融政策の動向も影響します。しばらくは、それぞれの動向を注視する展開が続くでしょう。

(この項終わり。次回7/27「「ものづくり」支える工作機械の受注好調続く 今後の動向は?」掲載予定)

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