第331話 運送業界・トラックドライバーの「2024年問題」 解決策はあるのか?
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町のカフェで投資談義を行っています。
神様:今日はトラックドライバーの「2024年問題」についてお話しましょう。以前にこのお話をしたことを覚えていますか?
T:はい。トラックドライバーの2024年問題( 第286話 運びたくても運べない?トラックドライバー「2024年問題」とは? )とは、働き方改革関連法により、トラックドライバーなどの自動車の運転に従事する業務について、2024年4月から年間の時間外労働時間960時間の制限が適用されるために様々な問題が発生することですね。
神様:その通りです。将来的には、年間の時間外労働の上限が720時間となる可能性もあり、さらに規制が厳しくなるかもしれません。
T:なるほど。物流業界では繁忙期と閑散期の差が大きく、結果として時間外労働時間が多くなってしまうのでした。規制を厳しくして大丈夫なのでしょうか?
神様:2021年のトラックドライバーの年間労働時間を見ると、全産業平均と比較して、大型トラック運転者で432時間(月36時間)長く、中小型トラック運転者で384時間(月32時間)長い状況です。その一方で、年間所得は全産業平均と比較して、大型トラック運転者で約5%低く、中小型トラック運転者で約12%低いのです。

T:流通を支えるトラックドライバーは必要不可欠な仕事ですが、人手不足がますます深刻化していく中で何とか手を打たなければなりませんね。
神様:おっしゃる通りです。さらに最近では、ロシアのウクライナ侵攻による物価高も影響が出ています。業界全体、各企業が努力することはもちろんですが、国全体で解決策を模索する必要があります。経済産業省では今年の9月から「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を開催しています。現在は企業などの関係団体からヒアリングを行い、12月から来年1月にかけて、課題や対策の中間取りまとめを行う予定です。
T:ずばりお聞きしたいのですが、具体的な解決策はあるものでしょうか?
神様:そもそも物流業界では、人手不足はもちろんですが、荷主のニーズに合わせてきめ細やかなサービスを行ってきました。その結果として、小口多頻度化、積載効率の低迷、意図しない荷待ち時間の発生など、非効率的な状況が発生しています。経産省のヒアリングによって出された各団体からの意見でも、非効率な商慣習・構造の是正や荷主の協力が重要との認識が共有されています。
T:「荷主」というのは、荷物・貨物の所有者で、物流業務の依頼主のことですね。
神様:その通りです。ドライバーは荷主の依頼によって動きます。仕事として、荷主の期待に可能な限り応えようとするのは理解できます。しかし、それが業界の健全な発達を妨げることになってしまってはいけません。今、改正貨物自動車運送事業法や厚労省による労働時間のルール「改善基準告示」など、荷主に対して様々な規制が行われています。荷主による違反原因行為をなくすことで、国全体で不健全な労働環境を改善しようとしています。
T:なるほど。荷主による違反原因行為とは具体的にはどんなものがあるのでしょうか?
神様:最も多いのは「長時間の荷待ち」です。次に多いのは「依頼になかった附帯業務」、その次に多いのは「過積載」です。こういったことを解消していくことで、効率的な荷物の積み降しを行い、2024年問題を解決していこうとしています。

T:加えて労働賃金を他産業と比較して遜色ないものにする必要もありますね。生産性を上げるためには自動化などのDX推進も必要です。これらの地道な努力により、未来の物流が作られていくのですね。2024年問題を解決し、この業界を盛り上げていきたいですね。
(この項終わり。次回12/28掲載予定)
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