兜のささやき兜のささやき

第328話 EVは普及期へ 日本の強み「パワー半導体」に注目

2022.11.30

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町のお茶屋さんで投資談義を行っています。


T:次世代半導体の量産に向け、国内で動きがありましたね。11月11日、国内の企業が出資をして設立された新会社の記者会見が行われました。次世代半導体の量産化を目指していくわけですが、今後の動向が楽しみです。

神様:政府も次世代半導体の製造基盤確立に向け、この新会社に研究開発予算700億円を投じて支援することを明らかにしています。また、日米での共同開発を始め、主要各国との連携も重要視されています。この取り組みがどのように実を結ぶのか注視していきましょう。

T:熊本県に工場を新設し、2024年の稼働を目指している台湾積体電路製造(TSMC)についても以前話しました( 第280話 日本半導体産業の復活なるか 世界の”変化の兆し”に注目 )が、ロシアによるウクライナ侵攻や台湾問題、そして米中の技術競争の激化などにより「経済安全保障」の重要性が増していますね。

神様:先端技術を活用していく上で半導体は大切な鍵となる技術です。政府は国会で「過去の反省を踏まえつつ、我が国に残る強みも生かしながら、国策として半導体産業の復活に取り組んでいく」ことを述べています。国を挙げて盛り上げる必要があり、私たちも応援したいところです。ところで、日本の強みとなる半導体とは、何かわかりますか?

T:スマートフォンなどによく使われるイメージセンサやパワー半導体などですね。

神様:その通りです。日本には、NANDメモリ、イメージセンサ( 第219話 スマホカメラから広がる「イメージセンサ」活躍の場 )、そしてパワー半導体( 第240話 日本に強み 電気自動車普及の鍵を握るパワー半導体とは? )の分野において、現在高い競争力を持つ企業が存在しています。よくわかりましたね。

T:これまでもよくお話に出てきて、勉強しました。

神様:パワー半導体については、まさに今、電気自動車(BEV)普及への期待が高まっていることから特に注目すべきだと思います。欧州では、2021年以降販売される新車のCO2排出量を95g/kmとする規制がスタートし、さらに次期規制も議論されています。自動車メーカーはBEVの販売を増やして対応しています。このまま進めば、技術革新による生産コストの低下が進み、早ければ2025年にBEVの普及期に入ると予想されています。

T:2025年まではあと少しですね。

神様:パワー半導体は、直流と交流の相互変換や周波数・電圧の変更などに用いられ、高電圧や大きな電流の制御に向いています。BEVの性能向上に不可欠な製品として、長期的に市場拡大が続くと期待されています。現在、炭化ケイ素を原材料とする高性能なSiCパワー半導体の活用が増え始めており、シリコン系パワー半導体と比べて電力の変換効率が向上するため、駆動モジュールや車載充電器などの小型化や電池容量の削減につながります。今後の電気自動車のコスト低下を促すでしょう。

T:車載用パワーモジュールの世界市場規模を見ると、現在はシリコン系パワー半導体がほとんどですが、今後は高性能なSiC系パワー半導体が大きく伸び、2030年にはシリコン系パワー半導体と同じくらいの割合にまで伸びる見込みですね。モジュールの小型化などでより多様な種類のBEVが登場するのでしょうね。

神様:おっしゃる通り、より高性能で多様なEVの登場を支えるのが、高性能パワー半導体です。この分野で日本のメーカーが世界的に確固たるポジションを築くことができるか、今後のポイントとなるでしょう。

T:最先端半導体の開発とともに、大いに注目すべき分野ですね。期待したいと思います。

(この項終わり。次回12/7「「潜在ゴルファー」増加中 ゴルフ人気が高まっている理由とは」掲載予定)

投資・相続のご相談は
いちよし証券へ

全国の店舗にて、お客様の資産運用や相続についてのご相談を受け付けております。
お客様の人生設計に寄り添いながら、最適なご提案を行います。

PAGE TOP
PAGE TOP